今夜はずっと、離してあげない。




けれど、その3年後。


中学3年生の、春のこと。

あかねさんが、小さな子供を庇って、トラックに轢かれて逝ってしまった。



私はまた、家族を失った。




あかねさんは、私がひとりになってしまった時のことを想定していたのか、すぐに私の保護者となってくれる人が現れた。


その人もまた、やさしい人だった。


そのやさしさに漬け込んで、私はとあるお願いをひとつだけしたのだ。

高校卒業まで、あの家に住まわせてください、と。



それでケジメをつけるつもりだった。

……全然、できていなかったけれど。



わすれることなんてそう簡単にできないし、思い出にもしたくなかった。


そんな、進展しない、春につま先を踏み入れた頃。



彼、千住サマと出会った。



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