今夜はずっと、離してあげない。
思えば、出会いも別れも、すべて春だった。
春がすべてを奪いさり、そして、また新しい何かを連れてきた。
「あなたがなぜ私に会いに来たのかは問いません。あかねさんに何か言われでもしたのか、はたまたもっと別の理由があったのか。そんなことはどうでもいいです」
そう。どうでもいいのだ。心底。
だって。
「あなたが私を変えてくれたことには、変わりありませんから」
また私にあたたかい場所をくれた。
笑える場所を、独りでない場所をくれた。
それで、もう充分。
「千住サマも、もう帰りましょう?あなたの帰る場所に。帰るべき場所に。……帰りたい場所に」
千井の家に転がり込む手もあったはずなのにそれをしなかったのは、多分、私の何かが彼を引き止めてしまっていたのだろう。
私の私生活の堕落さとか。彼、生粋の世話焼き人だろうから。