今夜はずっと、離してあげない。




「千住サマ。今まで、ほんとうにありがとうございました」



声が震えていないか心配だったけど、大丈夫そう。


ふかく。深くお辞儀をして、何も言わない彼に背を向ける。


引き止められは、しなかった。

ハナから期待などしていなかったし、引き止められても困るだけ。



それは、きっと彼にもわかってた。



公園を突っ切って、不自然にならない程度に歩いて歩いて、アパートに着いて、ドアをぱたんと閉めたところで。



目の前に、真っ暗に塗りつぶされた部屋が広がった途端、



……我慢できずに、崩れ落ちた。



……おわった、なあ。

おわらせちゃった、な。



寂しいも、淋しいも、わすれていたのに。

こんなに、真っ暗な部屋が虚しいなんて、また思う日がくるなんて。



はげまされていた。なごまされていた。


あなたに。

銀髪の見た目フリョウで、ちょっと口が悪いおかあさん気質の、あの人に。


……これでよかった。

よかったはず。だから、最後くらい。




「か、やっ……。カヤ、」




飽きるまで、名前を呼ばせて。



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