今夜はずっと、離してあげない。
その時は、ひたすらに驚いた。
ほとんどの先生が、俺を腫れ物に触るように見てくるのに。
話しかけるのさえ、ためらうのに。
彼女はなんのためらいもなく、もっと言うと見知った仲の奴に話しかけるように喋りかけてきたのだ。
そして、もっと驚いたのは、俺に喧嘩を売ろうとしていた上級生たちが、氷高あかねに気安く話しかけ始めたこと。
それを、彼女はシッシ、と追い払うようにしても、上級生たちは怒ることなく、逆に彼女の言葉に従うように教室に戻って行ったのだ。
その人の第一印象は、猛獣使い。
一連の流れをポカンと傍観していれば、氷高あかねはぷふっ、と笑い。
「きみ、千住伽夜クンであってるよね?これからどーせサボるつもりなんでしょ。なら、保健室においで。ていうか来て。保健室いないと先生が怒られる」
「(めちゃくちゃな先生だな……)」
俺のことを見透かすようにそう言った彼女、氷高あかねは、一緒にサボろうよ、と遠回しに提案してきた。