今夜はずっと、離してあげない。
けらけら笑い続ける私に、笑いがおさまってきた伽夜は、笑顔のままふと床に転がったままの私を見下ろして。
「……?!」
なんの前触れもなく、また触れたくちびる。
笑い転げて、お腹いたくて、目に涙まで溜めて。全然、そんな雰囲気でもなかったと思うのに。
「な、んで、」
「キスする理由がいちいち必要?」
「……ございませんね」
でもまあ、やられたままなのはなんとなく悔しかったので。
スッと、唐突に両掌を伽夜へと向けて。
「……私の手についてるガナッシュ、伽夜の顔に塗りたくっていいですか?」
「タチの悪すぎる嫌がらせやめろ。……おい、ちょ、マジでやめろって!」
雪がちらつく、土曜日の夕暮れ時。
泥棒にでも入られたのか如き惨状のキッチンで一頻り笑い合ったあと、私たちは後片付けに追われることになる。
……結果、その日のマカロン作りは、伽夜の贔屓目で見てのギリギリ及第点、という形でおさまった。