御曹司、家政婦を溺愛する。

美織と約束の時間にオフィスビルのレストランに着いたが、美織の父はまだ来ていなかった。
彼女のスマホに着信が入る。
「先に食事をして待ってて欲しいって」
「そうか」
俺たちは案内された席に座り、ワインをオーダーする。
間もなくして、前菜が運ばれてくる。

「私、やっと隼人さんのお嫁さんになれるんですのね。長かったですわ、隼人さんを狙う女性たちを追い払うことに、本当は疲れてしまったんですの」

彼女が何のことを言っているのかわからず「え?」と聞き直した。
「女性たちを追い払うって、何のこと」
「あら、気づきませんでしたの?私は生まれてからずっと「新堂隼人の許嫁」と言われてきましたの。だから、隼人さんに好意のある女性は嫌いでしたの」
そんなことを言い出した彼女に、俺は嫌な予感がした。

「美織、その女たちを虐めたりしなかっただろうな?」
「ええ?そんなこと……ただ、隼人さんに告白しようとする女の子たちに「私は隼人さんの許嫁なのよ」と申し上げただけですわ」
少し戸惑いを含んだ声色で、瞳が左右に揺れる。明らかに動揺していた。
「美織、女たちを傷つけるようなことはしていないよな?」
俺はもう一度、確認した。
すると、美織は言った。
「私は言っただけで、何もしていない」と。

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