御曹司、家政婦を溺愛する。
「お前が俺に異常なほど好意があることはわかった。本当に俺を振り向かせたいなら、お前は許嫁らしく周りを優しく気遣い、そして認めてもらう努力が必要だった。欲と権力だけで俺をモノにしようなんて、俺はそんなやり方では動かない。美織はやり方を間違えたんだ」
怒鳴る気持ちをグッと押し込み、冷静に彼女を諭そうとした。
美織は何度も首を横に振って声を上げた。
「そんなっ、隼人さんだって自分の立場をもう理解してもいいんじゃないんですの?私たちには恋愛だけでない、もっと重要な役目があるのよ。別に今の私たちはビジネス上の手札だっていいじゃないっ。私はそれでも隼人さんに会って好きになったんだし、隼人さんだって私といれば、いつか私のことを好きになってくれると信じてますもの」
「ありえない」
俺は彼女の長い話を、一言で拒否した。
「お前から重要な話が聞けて、俺の決心が固まった。ペラペラと真実を話してくれたお前には感謝するが、それだけだ。恋愛というものは、誰にでも与えられた自由の権利だと思っている。それを強制的に力でねじ伏せてきたお前に共感は持てないし、未だに自分の過ちに気づかない相手と婚約する気もない」
「まあっ!隼人さん、私との婚約を破棄されるおつもりですの?そんなこと、絶対に無理よ。父だって、おじさまだって、真面目に取り合ってくれないことだわ」
美織は驚愕にも似た声を張り上げ、顔を赤く染めて言い放つ。今度は美織が「ありえない」と、ヒラヒラと軽く手を横に振る。