御曹司、家政婦を溺愛する。
「何故……」
昼休みに帰ってきた時は、こんなものはなかったのに。
大河内美織に宣戦布告して自宅に戻ってきたら、ダイニングテーブルに俺の好きなそぼろ丼と佐藤の書いたメモ、金の入った封筒があった。
来週から昼食の用意ができません。
今までありがとうございました。
佐藤らしい丸みのある文字に、胸が押しつぶされそうになる。封筒の中には昼食に使ったと思われる食材のレシートと残りのお金が十万以上入っていた。
俺はすぐにコンシェルジュに連絡する。
「うちの家政婦から伝言を預かってないか」
しかし夜間のコンシェルジュは男性で、申し送りにも承っていないと言われた。
──俺の家政婦でなくなった、ということか。
契約者である母に電話をする。すると、
『大河内さんから電話があって、お父さん慌てて出かけたわよ。隼人、婚約破棄ってどういうことなの?』
と、言い出した。
もう連絡がいったのか、と想定内のことだったので「言葉のとおりだ」と言っておいた。
「それより、俺ん家の家政婦はどうした?」
この質問に、母は押し黙っている。
「もしかして、家政婦を辞めるのか?」
と聞くと、「ええ?」と反応した。
『鈴さん辞めるの?そんなつもりはなかったのに。わたくしはただ、言われたとおりに「隼人の家政婦を男性に変えて欲しい」と、会社にお願いしただけよ』
母の滑らせた口に、俺の声は低く「へぇ」と漏れる。
「家主の俺の断りもなく、勝手に変更の連絡をしたのか。で、誰に言われてやったことだ?」
何となく状況が見えきて、尋問っぽく聞いてみた。母は「そんな怖い声で言わないでよ」と子供のような文句を言い、意味不明なことを言い出した。
『何言ってるのよ。あなたが美織さんに「家政婦が色目を使って襲いかかってきた」って言ったんでしょ。美織さんが心配して連絡をくれたから、私が男性のスタッフに交代してって会社に連絡したのよ』
やりやがったな、あのクソアマ。