御曹司、家政婦を溺愛する。
「新堂くん、関口さんは大丈夫なの?」
「おいおい、俺より関口の心配かよ」
エレベーターの中で、新堂隼人は私を抱きしめながら不貞腐れた。
「そういうわけじゃ……新堂くんは一番だけど」
と、ポロッと言ってしまった。
すると彼は更に私を抱きしめ、
「俺もお前が一番だ」
と、耳元で囁いた。
屋上で、ヘリコプターを間近で見たのは初めてだ。
「鈴、乗るぞ」
「え?ちょっと……」
名前で呼ばれても驚く暇がないまま、私は連れて行かれてリコプターに乗せられた。
シートベルトをつけて、新堂隼人は操縦席に向かって、
「笠松さん、お願いします」
と、声をかけた。
ヘリコプターは離陸する。初めての感覚に、思わず新堂隼人の上着の裾を握っていた。
「このほうがいいだろ」
と、彼は私の手を握り、指を絡めた。
恥ずかしいけど、なんだか安心した。
「鈴、これから始まるから覚悟しろよ」
「え?」
何が始まるのか分からずにいると、新堂隼人は自分たちの前にあるカメラとモニターを触る。
モニターの画面には、どこかの会場に人がたくさん映っているのが見える。
──パーティー、かな?
そう思っていると、彼が「みなさん、こんばんは」と話し始めた。
どうやらカメラに向けて話しているようだ。
「みなさん、こんばんは。新堂隼人です。本日は新堂リゾート創業五十周年記念パーティーにご出席いただきありがとうございます。本来、社長を継いだ僕がみなさんの前で挨拶をしなければならない立場ですが、今日は夜景が綺麗なので会場のみなさんにも見て頂こうと思いました。どうですか、見えますか。僕の労いの気持ちと、僕の覚悟を、今日はみなさんが証人となって見届けて欲しいので、今はヘリコプターに乗っています」
新堂隼人はそう言って、カメラをくるっと外へ向けた。同時に夜景が見えているのか、モニターの中の人達の「おおっ」という歓声が聞こえた。