御曹司、家政婦を溺愛する。

「函館もニューヨークもナポリも、世界中にステキな夜景はたくさんありますが、ここも悪くないでしょう。タワーから宝石が流れて広がっていくように見えませんか?僕たちの会社も宝石はホテルであり、社員であり、一つ一つは小さいけれど、それがどんどん成長して広がっていけば僕たち人間としての成長も、そして世界各国のみなさんにも笑顔を与えられると思うんです。新堂リゾートはまだまだみなさんの手で大きくなれます。僕も世界へ飛んでみなさんが働ける環境を学びます。これからも共に前に進んでいきましょう」

モニターの全員が盛大な拍手をしている。

──というか、この半年のうちに、いつ社長になったの?

疑問はあるが、新堂隼人はニコッと笑う。そして「みなさん」と続ける。

「僕が三日前に社長に就任したことを知らない人が隣にいるので、紹介したいと思います。ずっと僕の心の支えになっていた女性です。彼女は一般人なので顔出しは控えさせていただきます」
そう言って、私に微笑む。
モニターからも「ヒュー」と声があがる。彼は気にせずに「ドレス、よく似合ってるよ」なんて言っている。そしてシートベルトで動けない代わりに、彼は私の手を持ち上げてキスを落とした。

ドキッ。
彼の唇が触れた手の甲が、ぽっと熱く感じた。

会場にも見えているのか、モニターから女の子たちの「キャー」という悲鳴が聞こえた。

「君は今まで家族のために、よく頑張ってきた。これからは自分のことを大切にして欲しい。君が不安なことも心配なことも、僕が一緒に乗り越えて行くことを、みんなの前で誓う」
「し、新堂くん」
サラリと揺れる前髪の下で、アーモンドの形をしたブラウンの瞳が優しく見つめている。

「俺、ずっとこの時を待ってた。もう、焦らすのは無しだ」
「ち、ちょっと……」
気持ちの準備が、と思っていると、彼はポケットから小さな箱を取り出した。
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