あやかしあやなし
「鞍馬から客人が来るそうだ」

 言った途端、惟道から妖気が迸る。中の雛が『鞍馬』という言葉に反応したのだろう。

「僧正坊が来るから、俺に来ないかと言っているが。雛を出すということか?」

「僧正坊ならひとっ飛びでこっちに来たほうが速そうだけど」

「僧正坊だけではないらしい」

「ふーん? 章親のほうから呼び出すなんて珍しいね? その客人のせいか」

 この庵から京までは結構な距離だ。章親であれば、人を呼び出すより自分から来そうなものだが。
 文を読み終えた惟道が、鬼っ子を呼んだ。

「お前も来い」

「えっ」

 何の説明もなくいきなり振られ、鬼っ子は驚いて惟道を見た。

「お。おいらも? 何で……」

「章親が来いと言うのだ。明日向かう」

 短く言い、さっさと旅支度を始める。

「まぁ別に、おいらたちは出仕があるわけでもないからすぐにでも行けるしね」

 日々の予定があるわけではないので、思い立ったら即動ける。それでなくても惟道にとって章親の言うことは絶対だ。別に文にもすぐに来てくれとは書いていないが、当たり前のように支度をする惟道を少々呆れながら見つつ、小丸は訳がわからずおろおろする鬼っ子を促した。
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