あやかしあやなし
「で、何でいきなり去って行ったのじゃ?」

「さぁ。何か惟道を陰陽師と思ったみたい」

「ほー。こんなところに陰陽師がおるわけなかろうに」

 やれやれ、と息をつき、和尚は周りを見渡した。といっても和尚は特に特殊能力があるわけでもない、ただの人だ。唯一人と違うのは、人であろうと物の怪であろうと関係なく接するところか。
 だからこそこの寺に物の怪が集まるようになり、和尚は異端視されるようになったわけだ。もっとも和尚は、そのようなこと気にも留めていないが。

「怪我をしておったのは何者じゃ?」

「烏天狗だ」

 短く、惟道が答えた。

「小さかったから、雛かもしれん」

「そんな小さいものがこんな出血したら危ないではないか。生きておったのか?」

「雛ってほど小さくないでしょ」

 小丸が突っ込んだが、雛でなくてもこの出血量は危険である。

「そういや生きてたのかなぁ」

「生きてはいるようだったぞ。微かな妖気を感じたし」

「それは烏兎の気じゃないの?」

「烏天狗というのは結構な妖怪だ。旅人のなりをしてたし、妖気も隠してるだろう。それに隠してなかったら、あんな微弱な気ではないと思う」

「なるほどね~。さすが惟道、物の怪の医者だよね」

 小丸が褒めると、周りの物の怪たちが、ぱちぱちと拍手する。

「それもこれも、安倍家にいたからわかったことなんだがな」

 だがその安倍家にいたことが、烏兎には許せないことだったらしい。

「さっきの言い方じゃ、安倍家で得た知識をもってあの雛を治療しようとしても、嫌がりそうだよねぇ」

 雛ではない、と言ったくせに、小丸はもう烏鷺のことを雛と言っている。元々烏鷺、と烏兎が呼んだのは一瞬だったので、覚えていないのだ。
< 14 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop