あやかしあやなし
「そんな危険な術、そうそう教えないじゃない」

「そりゃ、統括してるのが、うちとここだからな。でも教えなくても書庫にはある。実際道仙のような奴もいたんだ。文献を元に、術を再現することに長けた奴がいるかも。研究熱心な奴は、研究材料を手に入れれば術を試すことに躊躇いはないだろうし」

「そんなっ」

 がば、と立ち上がる。が、ここで勢い込んでも、誰がどの程度の規模でやっているかわからない。

「でもそれって、惟道が知ってるってことは、かなりな規模じゃないの。あんなところまで知れ渡るぐらいでしょ」

「寺は都からは離れてるけど、物の怪の往来は頻繁なんで」

 小丸が言う。都の噂は結構入るのだ。鳥の物の怪などにかかれば、都の情報などあっという間に化野まで届く。

「そんな噂は聞いてた。でもだからこそ、最近は情報が入ってこなくて。で、おいらが実際来てみたら、馴染みの店が無くなってたんで……」

「お店?」

「あ、おいらたち、こういうの売ってるのよ。売るっつっても振売りじゃいくらも売れないし、そんなゆっくりもしてられないんで、いっつも卸させて貰ってるところが都にあって。ま、物の怪がやってるとこなんだけど」

「あ、東の市の飯綱(いづな)か」

 意外に守道が反応した。章親と違い、あまり積極的に物の怪と仲良くもならない守道だが、飯綱とは付き合いがあるらしい。

「結構ものがいいんだよ。イタチなだけに、筆とか上物だし。俺は入用なものは大抵あそこで調達してたから、ここ最近売りに来てくれないからちょっと困ってたんだが。そうか、商売してないのか」

 イタチの物の怪の飯綱とはそのまんまだが、堂々としていれば返ってバレないものである。そもそもそれなりの身分の者は、自ら買い物になど行かない。故に正式な陰陽師が来ることもないわけだ。
 守道の加茂家には、飯綱が自ら振売りに行く。もちろん守道が正体を知った上でのことだ。
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