あやかしあやなし
「雛とはいえ烏天狗だし、普通はそうそう弱らないとは思うんだけど、血みどろで。ありゃ何かの術を食らったんだってすぐわかりまさ。烏天狗をあそこまで痛めつけるのは普通の人じゃない。案の定、烏兎は安倍家にいたって知っただけで、惟道を警戒してどっか行っちまった」

「え、何でここにいたってだけで……」

 きょとんとする章親に、守道がまた渋い顔をした。

「安倍家といえは陰陽師、てことだろ」

「あ、ああ~、そういうこと。でもそんなの、僕らはやってないよ?」

「おいらたちはそうだと思ってるけど、物の怪たちの間では、陰陽師とは物の怪狩りをするものって認識になってるようで。烏兎だって、あの雛を和尚に診て貰おうと思って来たんだろうに、全くどこ行ったんだか。雛、死んじゃうよ」

 和尚は薬草に詳しいので、寺は怪我などをした物の怪の診療所のようになっているのだ。

「それは悪いことしたなぁ。その雛、心配だね……」

 別に章親が悪いわけではないのだが、しょぼん、と肩を落とす。物の怪も式神も人と同じように接する章親としては、このような事態でその雛が命を落としてしまうと寝覚めが悪い。

「失せ物探しの術とかで探せるかなぁ」

「どうかな。烏天狗ともなれば、己に向かってきた術ぐらい察知するんじゃないか? まして今は警戒してるだろうし、術を跳ね返すかもしれん」

 結構な術を使える章親と守道だが、相手も結構な物の怪だ。おいそれと見つかるとも思えない。

「ああ困った。探す手がないとなると、余計に心配になるよ」

 頭を抱えて呻く章親に、小丸はちょっと怪訝な顔を向けた。

「こんなに物の怪のことを心配してくれる人間ってのも珍しいね。惟道よりもわかりやすい」

「あいつは自身がほぼ物の怪だからな」

 守道の突っ込みに、あはは、と笑い、小丸は立ち上がった。
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