あやかしあやなし
「わかったよぅ。確かにおいらたちだけじゃ、見つけられないかもしれないしね。それに惟道の言う通り、他の皆が守ってくれそうだし」
小丸が、やれやれ、というように立ち上がり、もう一度、じ、と水盆を覗き込んでから戸を開いた。そこには先まではいなかった、大きな影が蹲っている。
「火鼠の親父じゃないか」
小丸の声に赤い目を向けたのは、狼よりも大きな鼠だ。
『惟道が困っておると聞いての。何やら急ぎの用があるのであれば、わしに乗れば速かろう』
「ありがたい」
言うなり惟道は、躊躇も警戒心もなく階を駆け降りて、ひらりと火鼠の背に飛び乗った。普通は巨大な鼠など、触るのはおろか近寄ることもしないだろうに。
『こ、惟道。この鼠さんは知り合いなの?』
若干引き気味の章親の問いに、惟道は少し首を傾げる。
「実際会ったのは初めてだ。だがこちらに来てからは、こういうことは、よくあることだ」
どうやらこの辺りの物の怪の間で、惟道は結構な有名人のようだ。人も物の怪も全く関係なく接する人間など珍しいからだろう。寺の和尚と並んで、惟道も有名人になったようだ。
『和尚のところに若いのが来た、という話は聞いておった。物の怪とも普通に接する変わった者だと皆からよく聞くしの。実際会うまでは、まさかここまで驚くことなく普通でおれるとは思わなんだが』
苦笑いしつつ、火鼠は蹲っていた身体を起こす。
『愛宕山に行けばいいのじゃな』
「あ、ちょっと待ってよ。ほら章親、あんたもちゃんとついてきてよー」
小丸が慌てて地を蹴る。たちまち狐の姿になり、風のように走り出した。火鼠もその後を追う。章親は、火鼠が走り出す直前に、惟道が手を伸ばして彼の手を取った。
『いやぁ、凄いなぁ』
章親が呑気に言う。今の章親は気の塊のようなものなので、どこかを掴んでおけば簡単についてくる。
小丸が、やれやれ、というように立ち上がり、もう一度、じ、と水盆を覗き込んでから戸を開いた。そこには先まではいなかった、大きな影が蹲っている。
「火鼠の親父じゃないか」
小丸の声に赤い目を向けたのは、狼よりも大きな鼠だ。
『惟道が困っておると聞いての。何やら急ぎの用があるのであれば、わしに乗れば速かろう』
「ありがたい」
言うなり惟道は、躊躇も警戒心もなく階を駆け降りて、ひらりと火鼠の背に飛び乗った。普通は巨大な鼠など、触るのはおろか近寄ることもしないだろうに。
『こ、惟道。この鼠さんは知り合いなの?』
若干引き気味の章親の問いに、惟道は少し首を傾げる。
「実際会ったのは初めてだ。だがこちらに来てからは、こういうことは、よくあることだ」
どうやらこの辺りの物の怪の間で、惟道は結構な有名人のようだ。人も物の怪も全く関係なく接する人間など珍しいからだろう。寺の和尚と並んで、惟道も有名人になったようだ。
『和尚のところに若いのが来た、という話は聞いておった。物の怪とも普通に接する変わった者だと皆からよく聞くしの。実際会うまでは、まさかここまで驚くことなく普通でおれるとは思わなんだが』
苦笑いしつつ、火鼠は蹲っていた身体を起こす。
『愛宕山に行けばいいのじゃな』
「あ、ちょっと待ってよ。ほら章親、あんたもちゃんとついてきてよー」
小丸が慌てて地を蹴る。たちまち狐の姿になり、風のように走り出した。火鼠もその後を追う。章親は、火鼠が走り出す直前に、惟道が手を伸ばして彼の手を取った。
『いやぁ、凄いなぁ』
章親が呑気に言う。今の章親は気の塊のようなものなので、どこかを掴んでおけば簡単についてくる。