あやかしあやなし
「そうじゃのう。お上が土地を移るには、まず陰陽師が土地を調べるはずじゃし。都はなかなか、最強の土地じゃ。それが何故かわからぬ者はおるまい」

 和尚も頷く。

「道仙のような者が、己の力を見せつけるためにやっておるのではないか?」

 ふと、惟道が顔を上げた。惟道の元あるじである道仙は、かつて章親の祖父・安倍晴明との術合戦で敗れ都を追われた蘆屋道満の息子だ。あるじといっても惟道は元々道満に拾われたのであって、道満は息子同様に扱ってくれたので、道仙とは歳の離れた兄弟ということになるのだが。
 道満は都を追われたことをさほど気にもせず、むしろ流れた先の播磨で活躍していたのだが、道仙は都に返り咲くことを望んだ。結果的に失敗したが、己を追い落とした宮中を潰す計画を立てて惟道に鬼を植え付けたわけだ。

 都は政治の中心なだけに、陰謀も渦巻いていよう。道仙のような者は数多いる。一旦追い落とされた者がまた中心に返り咲くのは容易ではない。いっそのこと都を潰してしまおうと考えたとき、四神相応の土地に目がいってもおかしくない。都の物の怪を排除することで、気の均衡を崩すのだ。道仙の行った方法よりも簡単だ。

『う~ん……。でも……物の怪を狩ったところで、あんまりわからないんじゃないの? 自分の力を示すためなら、誰かがわざと狩ってるってことを示す必要があるけど、今の感じだと人は大して気付いてないよ』

「人に示すわけではないのかもしれぬ。むしろ、物の怪に知らしめるのが目的ならどうだ?」

『ええ?』

 章親が、驚いたように惟道を見る。物の怪に人が力を見せつけるなど、考えもしなかった。
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