あやかしあやなし
『何か悪さをする物の怪がいて、それを抑えつけるためとか?』
首を傾げて考えていた惟道は、周りをぐるりと見回した。
「……そんな大層な悪い者が現れたなど、聞いておるか?」
「さぁ~?」
これまた首を傾げる小丸に同調するように、小さな物の怪たちもふるふると首を振り、周りの空気(おそらく目に見えないような物の怪たち)が、さわさわと揺れた。それを、烏兎が少し微妙な顔で眺めた。
「一度、そ奴を捕まえる必要があるな」
惟道が、膝先の円座に寝ている烏鷺を見る。酷い怪我だったが、後は安静にしていれば治るだろう。
「捕まえたいのはやまやまじゃが……。奴はしつこくわしらを狙ってきたし、とても都には戻れぬ」
「しつこく? これだけの怪我を負わせてなお追ってきたというのか?」
「そうじゃ。まるで烏鷺を捕まえるまでは諦めぬという感じでな」
憎々しげに言う烏兎を、惟道はまじまじ見た。そして再び、烏鷺に目を落とす。
「怪我を負った烏天狗は、山に帰れなんだらどこで養生するのが一番安全なのだ?」
「人の中であろうの」
人ほど精気に溢れたものはない。それに他の動物よりも、遥かに取り憑きやすいのだ。
「なら俺の中に入ればよい」
円座ごと烏鷺を抱え上げて言う惟道に、皆ぎょっとした。
「いやいや惟道、そんな簡単に」
『そうだよ。人の中に物の怪を入れるのは危険極まりないよ』
小丸も章親も身を乗り出して制止する。が、惟道は抱えた円座を膝の上に乗せて章親を見た。
「俺は元々そういう者だ。章親だってわかっておろう」
惟道の『器』としての能力は並ではない。人としての感情がごっそりと抜け落ちている分、どんなものでも身の内に取り込むことができる。
首を傾げて考えていた惟道は、周りをぐるりと見回した。
「……そんな大層な悪い者が現れたなど、聞いておるか?」
「さぁ~?」
これまた首を傾げる小丸に同調するように、小さな物の怪たちもふるふると首を振り、周りの空気(おそらく目に見えないような物の怪たち)が、さわさわと揺れた。それを、烏兎が少し微妙な顔で眺めた。
「一度、そ奴を捕まえる必要があるな」
惟道が、膝先の円座に寝ている烏鷺を見る。酷い怪我だったが、後は安静にしていれば治るだろう。
「捕まえたいのはやまやまじゃが……。奴はしつこくわしらを狙ってきたし、とても都には戻れぬ」
「しつこく? これだけの怪我を負わせてなお追ってきたというのか?」
「そうじゃ。まるで烏鷺を捕まえるまでは諦めぬという感じでな」
憎々しげに言う烏兎を、惟道はまじまじ見た。そして再び、烏鷺に目を落とす。
「怪我を負った烏天狗は、山に帰れなんだらどこで養生するのが一番安全なのだ?」
「人の中であろうの」
人ほど精気に溢れたものはない。それに他の動物よりも、遥かに取り憑きやすいのだ。
「なら俺の中に入ればよい」
円座ごと烏鷺を抱え上げて言う惟道に、皆ぎょっとした。
「いやいや惟道、そんな簡単に」
『そうだよ。人の中に物の怪を入れるのは危険極まりないよ』
小丸も章親も身を乗り出して制止する。が、惟道は抱えた円座を膝の上に乗せて章親を見た。
「俺は元々そういう者だ。章親だってわかっておろう」
惟道の『器』としての能力は並ではない。人としての感情がごっそりと抜け落ちている分、どんなものでも身の内に取り込むことができる。