もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
「あたしのこと、今度こそ、きらいになったでしょ?」
 震える声が、うつむく顔が、あたしに教える。
 涼子(りょうこ)がそれでも、あたしがNO(ノー)って言うのを待ってること。
 それなのに、
「うん」
 言ってしまうのは、たぶん好きの裏返し。
「…………!」
 ぎくっとあがった涼子の泣き笑いの残る顔が、せつなかった。
「涼子なんか大っきらい!」
 でも、わかる。
「死ぬほどきらい! すっごくきらい! めちゃくちゃきらい! 超きらい!」
「……あ、きおぉぉ」
「ち…くしょう」
 声がこみあげてくるもので震える。
「たったこれ…だけで、ネタぎれ、かぁ?」
 言い終わる前に笑っていた。
明緒(あきお)……」
 盛大に笑うあたしにとまどっている涼子に、仲直りのデコぴん1発。
「あはははは。うそ! うそうそ」
「あ…はは……痛ぃぃい」
 おでこを両手でおさえた涼子は、笑いながらぽろぽろ泣いた。

 恋人とか、友だちとか。
 そんな区別なく、誰かの1番でいたかった、わがままな、コドモみたいな涼子。
 あたしの気持ち、ぐちゃぐちゃにかきまわして。
 溶かして、かためて。
 新しくしてくれて、ありがとう。

 だれかに好かれたいっていう気持ちには、友だちも恋人もないのかもしれないね。
 だれかを好きだと思う気持ちにも……。
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