もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
「好きに言わせておけばいいじゃん。どうせ、ふった女がひとりやふたり増えたって、きみには変わりないでしょ? だったら、あたしのことなんか、かまわないでよ。あたしはあたし。だれになんて言われたって平気だし。いいよ、別に! でも――…」
 ひと息に言い放って。
 くつ箱からつかみ出したスニーカーを、藤島(ふじしま)の顔の前につきつける。
「もう二度と! あたしには話しかけないで」
(ああ、やっちゃった)
 ごめん、涼子(りょうこ)
 藤島と――こんなやつと――仲直りするなんて。
 そんなこと最初からあたしには無理だったんだってば。
 でも、でも。
 これだって“関係ない宣言”でしょ?
 あんまり気分がいいとはいえないけど。
 これでまた、ちょっと前の、完壁な他人にもどれるはずだから。
 こんなもんで、かんべんしてくれるよね?

 先回りして言いわけを考えながら、脱いだ上履きをくつ箱にぶちこむ。
 心はしょげているのに、身体は怒っている困った状態は、
「なあ……」
 なれなれしく肩にのった藤島の手で解消された。
「なによっ」
 心身共に怒り爆発。
「おれが男だからか」
「えっ?」
「おまえが、おれのことを気に入らないのは、おれが男だからか?」
「なっ…」
「本当に女がいいのかよ、おま…」
 最後まで聞いてなんかやらなかった。
 返事はビンタ1発。
(ごめん、涼子)
 言いわけなし!
 これで、あたしと藤島は、完全に第2次大戦開始。
 もうりっぱなケンカ相手だよう。
明緒(あきお)っ!」
「…るっさい! 二度と話しかけるな、ばか慎吾(しんご)
 絶縁状ならぬ、絶縁ゼリフを残して全力疾走。

 2階の生徒玄関から地上まで一気に走り降りて。
「アチッ」
 なにかを踏んではじめて、靴をはいていなかったことに気がついた。
「あああああ、もうっ!」
 それからもうひとつ。
 あたしたちはお互いに、4年ぶりに名前を呼びあったということにも。




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