惚れたら最後。
それから約1ヶ月後、オーダーメイドのスーツが完成したというので琥珀と一緒に店に向かった。
微調整のため試着を済ませた琥珀が試着室が出てきたのを見て硬直した。
黒を基調としたシンプルなスーツだが、琥珀が着るとやけに色っぽい。
ふと、こんな女に誘惑されたらたまったもんじゃねえなと思った。
「あの、そんな見ないでくれる?」
「別に見たって減るもんじゃねえだろ?」
そう言うと冷めた目で見つれられたが、その視線すら愛おしい。
出来上がったスーツ一式は特に手直しすることなく引き取ることになったので、店を出て車に乗った。
「スーツか、着たままヤるのもアリだな」
「ナシです、馬鹿じゃないの?
それにせっかく作ってもらったんだから大事に着ないと」
「……琥珀って妙に真面目だよなぁ、情報屋のクセして」
「反面教師だよ、最低な母親から生まれれば少しでもまともにならなきゃって思う」
ふと、自分から生みの親の話をしてきた琥珀。
まさか自分からその話を振ってくるとは思わずハンドルを握る手に力が入る。