ハツコイぽっちゃり物語
視線の先にキラリと光る何かに息を飲んだ。
ドクドクと速度を上げる心の音。
なぜか逸らせなくてただ見つめると、向こうから声がした。
「もしかして千桜起きてる?」と掠れた声にうんと頷く。
キラリと光ったのは恋ちゃんの目。
豆電球の光が反射したのだろう。
とはいえ、私に背を向けて寝てたはず。いつこっち向いてた?寝返りする音なんて全く聞こえなかった……。
「ねえ千桜」
彼が発したとともにタイマー設定していた豆電球が消えた。そのおかげで部屋が真っ暗になったのを機に少しずつ胸の高鳴りが治まってくる。
微かに彼の輪郭だけが見えるけど心は静かだ。
「……いや、何でもない。おやすみ」
私に背を向けたと思われる衣擦れの音を耳にして、顔をしかめる。
これは恋ちゃんの悪い癖だ。
何か言いたいことがあるはずなのに思い留まって止めてしまう。
言いたいことがあるなら言えばいいのに。
気になっちゃうじゃん。
『何か』あるから私を呼んだんじゃないの?
そういえば、神社の帰りに恋ちゃんが言おうとしてた事を思い出した。
「恋ちゃん」と呼ぶと、ん?とくぐもった声が返ってきた。
「帰りさ、私に何か言おうとしてたよね?」
「え?あぁ」
「何でもない、は無しだよ」
そう釘をさすと、恋ちゃんはため息混じりに「わかった」と答えた。
時を刻む音が3つなった後、彼は言った。
「昨日の夜さ、俺に何かした?」