ハツコイぽっちゃり物語

にこやかに話している先輩だけど私は戸惑った。


せ、先輩が私を見かけてた……?
“よく”?

わ、わたし、先輩の視界に入って……っ。



「米倉さんの隣にいたのってカレ、」

「幼馴染です!」


先輩の言葉を遮って言った言葉は廊下に響くくらい大きな声。


思わず出た声に自分でも驚いたけど、間違った認識はしないでほしかったから。葵生先輩には。絶対。


見開かれた先輩の目が私を捉えて、それからゆっくり弧を描くように笑う。


「そっか」なんて安心したような声音になんの意味がこもっているのか分からない私は何度も頷く。



ポン。


突然頭に触れられたことに頷いてた首が硬直する。


頭……。
先輩の、手だよね……。
え……?


「ごめんね。引き留めちゃって。勉強頑張って」

「大丈夫です。先輩も勉強頑張ってください!」


図書室に入ろうとする背中に一瞬思考停止していた脳を再起動させてそう呼びかけると手を振ってくれた。


閉じられたドアを永遠と眺めてしまいそうなくらいぼーっと立ち尽くすけれど、先程頭に置かれた手の感触がまだ残ってて、身体が熱くなった。

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