訳あり同居なのに結婚してしまいました
今は二十時だ。
まだ開いている花屋はあっただろうか。
駅前の花屋は遅くまで開いている記憶があった。

駆けつけると、ちょうどシャッターを閉めようとしているところだった。
慌てて店員に声をかけた。

「すみません、花束がほしいんです。」

驚いた顔の店員だったがすぐに笑顔になり、俺を店内へ招き入れてくれた。

「どういったものがご希望ですか?」

どういった、と言われても何も考えていなかった。
とにかくプロポーズするには花束だろうなんて安直な考えで走ってきただけだ。今落ち着いて考えてみれば、花束よりも指輪の方がプロポーズに相応しかったかもしれない。
浅はかな考えの自分に嫌気がさす。

「あの、お客様?」

頭を抱えて悩む俺に、店員は困った顔になった。

「ああ、すみません。あの、プロポーズしたくて。」

素直に言うと、店員は顔を赤らめて瞳をキラキラとさせた。
いや、君にではないのだけど……勘違いしていないよな?
若干の不安を覚えつつ弁解しようと口を開くと、先に質問される。

「ご予算はいかがいたしますか?」

「え?ああ、お任せします。」

店員は慣れた手つきで花を揃えていく。
やがてそれは綺麗にラッピングされ、大きな花束となった。
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