Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
叫んだ女王へ陛下のそばには明人叔父さんが相変わらずの無表情で寄り添っている。けど、陛下がよろけた瞬間素早く彼女をーお腹に配慮しながらー抱き止めた。
一瞬、陛下は叔父さんに目を向けて「ありがとう」とお礼を言ったのだけど。はにかみながらも交わした視線はあたたかなもので、お互いの愛情と信頼が。二人がどれだけ固く結ばれたのか、を十分実感できるものだった。
『……確かに、わたくしは……子を望めないと言われていました。今でも原因不明の微熱や体調不良が度々出ることは否定しません。
ですが……だからこそ、この子を授かった奇跡がなおのこと嬉しいのです』
そっと、お腹に触れる彼女は……とても慈愛に満ちた瞳をしていて。立派な“母親”そのものだった。
『……わたくしは、一人の女として。母親となる夢は諦めていたのです。でも……神はこの子を授けてくださった……こんなわたくしでも、母となってよいとお許しいただけたのです。
そして、わたくしは女王の責務として……次の世代に血を遺す役割を果たしたく思います』
『陛下……お気持ちはよくわかりますが……それではお命が』
御典医長がなおのこと反論しようとすると、女王陛下はにっこり笑って自信たっぷりに宣言された。
『大丈夫、わたくしは死にませんし、この子を必ずこの世に産み出してみせます。そして、わたくしの生がある限り、責任を持って慈しみ守り育てますわ』
『……心配不要だ。オレが全力で護る……何があってもな。例え命を失っても、コイツと子どもを護り通す』
(えええ……叔父さん、ちょ、女王陛下をコイツって……)
ツッコミどころが大分ずれたぼくだけど。二人の決意の強さに気圧され、認めざるを得なかった。陛下の御出産を。
けど……まさか、その時点では想像もつかなかった。本当に叔父さんが二人を護り命を落として、女王陛下も御子とともに日本へ渡り亡くなるとは。