Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編

まだ10歳そこそこの王太子殿下に、ご自身の責務についての重要性は解っているのかーーと。一瞬疑ってしまった。

『殿下……不敬を承知で申し上げますが、あなた様は王家直系の血を引き、そして将来国王陛下となられる。お血筋を後世に遺されるのも大切なお仕事であり、責務ではございませんか?』
『……解っている。代々の国王陛下が苦労して連綿と血を繋いでこられた。でなければ、ぼくは生まれて居なかったこともな』

王太子殿下も苦悩の表情を垣間見せ、本意で無いことを窺わせた。彼は、他人の想像以上に自分の立場を理解し自覚している。そして、覚悟の上で先ほどの発言……後継者を作らない決意をしたのだろう。

『母上の私利私欲に走った政策は、特定の者のみに富と利を与え、政(まつりごと)を腐敗堕落させるだけだ。回りの者はぼくに耳ざわりの良いことばかり囁くが、ぼくだとて愚かになりたくない。こう見えて情報源はいくらでもあるのだ』

だから、と王太子殿下は言葉を継ぎ足された。

『母上や一族を政治的に除く……この国の改革は、それなくしてあり得ない。ぼくに王子が生まれたなら、母上は嬉々として王位の後継者に据え、ご自身の影響下に置こうと……いつまでも最高位の権力を手放そうとされないだろう。それを阻止したいのだ』

だから、と。王太子殿下は断ずる。

『国のため、カタリーナには犠牲になってもらう。だが……だからと言って冷遇してはあまりに不憫ではないか。だから、ぼくはカタリーナを夫として愛する。何からも全力で護り、決して不幸になどさせぬ』







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