Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編

思えば、不思議なほどに侍従だの警護の人たちがそばに居なかった。後でお母様の組織のお陰と知ったけれどね。

『……そのような事実が……』

思った通りに、ゲオルグ王太子殿下は最初から否定せずにぼくたちの話を真面目に聴いてくださった。

『……おかしいと、違和感を覚えたことは幾度もあった。しかし、知ろうとすると母上の妨害がいつもあった。表向きの政治も女王陛下ではなく、実際に母上の意向が影響しているのも知ってはいる』
『……そうでしたか』

王太子殿下は冷静に淡々と語ってはいるが、相当歯がゆく辛いのか、怒りに近い顔で握りしめた両手を震わせていらした。

それにしても。まだ10歳というのに、相当な聡明さだ。溺愛されて育てられた者特有の、わがままさや人を見下す傲慢さなど欠片もない。
見ず知らずのぼくたちの話をきちんと聞き、今までの自身の見聞きした事で、自分の頭で考え判断している。しかも、冷静で客観的な物の見方をしてる。
これは、王太后も自慢の息子と溺愛したくなるのも無理はない。
けど、だからと言って実の娘を虐待していい理由にはならないけどね。

『……残念ながら、真実でございます』

ぼくがきっぱりと肯定すると、うむ、と王太子殿下は頷かれた。

『だが……不甲斐ない話だが……母上を抑える力がぼくにはない。将来王位に就けば努力はするが、不確実だ。だが、非力なぼくにも唯一確実にできることはある』

ニヤッ、と王太子殿下は口元だけで笑い、とんでもない爆弾発言をされた。

『ぼくの婚約者は公爵令嬢のカタリーナと決まっている。彼女には気の毒だが……子どもは作らないか、王女のみにしておく。まだ女王即位の例は少ないからな。その間にミルコ女王……姉上に王子が生まれたなら、ぼくは確実にその子を後継者に指名するよ』





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