やり直せる?

···急な展開


部屋に入り
ソファーに腰かけて貰うと
楠木さんは、キョロキョロと回りをみて
「ワクモの商品だ。」
と、言ったから
「大好きなんです。ワクモの品物。」
と、珈琲を入れて出す。

楠木さんは、
最初に店に来た時の話から
私の離婚についてまでを話してくれた。
義兄から
「冷やかしなら紗英に近くな。」
と、言われたことまで。

「なんだか、私生活に踏み込んだ
みたいに思えて反省していたんだ
それで、遠退いてしまって····」
と、話してくれたから

私も正直に話した。

楠木さんは、私の離婚理由をきいて
びっくりしていたが
「それが全てではありません。
まして、片思い?うまくいくとは
思っていなかった·····」
とも話した。

楠木さんは、
30代の時に結婚したいと思っていた
女性がいて、付き合いも順調で
お互いの親にも挨拶を済ませて
後は挙式を待つだけと
なっていたが·····

楠木さんか出張から戻ると
彼女は、荷物と共に居なくなっていたと。

彼女のご両親から謝罪と報告があり
彼女は、なんと楠木さんの友人と
逃げていたと。

式は、キャンセル
住まいもキャンセル
全て、相手のご両親がされたとか。

それからは、恋や恋愛とは無縁だった。

だが、年をとった母が
心配して見合い攻撃に辟易して
いる日々で実家が遠退いていた
と、話してくれた。

どうして、
そんなことが出来るのだろうか?と
涙が止まらなかった。

楠木さんは、ティッシュで
私の涙を拭きながら
「紗英ちゃんは、優しいね。」
と、言っていたが·····

数年後にその相手の方から
謝罪と共に楠木さんの友人が
亡くなったと知らせがきたと
話してくれた。

亡くなるのがわかったから
少しの間だけでも
一緒にいたかったのだろうか?
それでも楠木さんには、
大きな打撃だったと
どんなに傷ついたのだろう
と、思ってしまった。

「結婚したいほど好きだった、その方と
元に戻ろうとは思わなかったのですか?」
と、訊ねると
「う~ん。思わなかった
と、言うか、そんな気持ちにも
ならなかった。」
と、言われて
ホッとする自分がいて
玉砕したのに·····と、思っていた。

「紗英ちゃん?何、紗英ちゃんかな?」
「あっ、東野です。
   東野に戻りました。」
と、伝えると
「東野さんか。
では、東野 紗英さん。
私と将来を見据えたお付き合いを
して頂けませんか?」
と、楠木さんから言われて
「ええっ?私ですか?」
と、話の流れから驚いて訊ねると
「俺に好意を抱いて離婚して
くれたんだよね。」
と、言われて
「えっと、そうですけど。
本当に上手くいくとは
思っていなかったから。
それに、私はバツイチで。
おばさんで。
綺麗でもありませんし。」
と、伝えると

「紗英ちゃんは、綺麗で
とても可愛いいよ。
君の笑顔にずっと惹かれていた。」
と、私の手を取り立ち上げてから
抱き締め
「返事は?」
と、言われて
「うふふっ、はい。
スーツ姿が素敵でイケメンで
声も好きだし話し方も好きです。
ずっと、そばに置いてくれますか?」
「なんか、照れるけど嬉しいな。
ずっと、ずっと一緒に居よう。」
と、言って貰えて
私は、自分の腕を楠木さんの
背中に回した。

すると
「紗英、好きだよ。」
と、キスをされて
久々のキスに蕩けそうになってしまった。

真っ赤な私を楠木さんは、
笑いながら
「明日、拓斗に話さなければ
あっ、紗英のお姉さんは
紗英好きだよね。大丈夫かな?」
と、言うから
「大丈夫。佳英ちゃんも
楠木さん、良い人だよ。
って言っていたから」
と言うと
「紗英、楠木さんは、
なんか、固いよ。
俺は、貴史(たかし)ね。
ほら、言ってみて。」
「····貴····史···さん?」
「さんも、要らないけど
まっ、良いか。」
と、貴史さんは、言いながら
私にキスをして
連絡先を交換して帰って行った。

本当に凄い展開にびっくり
でも、嬉しくて
顔がニヤニヤしちゃう。
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