パトリツィア・ホテル
| 第十章 バカンス

「咲! 起きなさい! パトリツィアのお坊ちゃんが来てるわよ!」

「ふぇ?」

「夏休みもまだ初日から、何てだらしない娘なんでしょうね。お坊ちゃん、本当にごめんなさいね」

「あぁ、大丈夫ですよ、お母さん。おかげで僕、咲さんの貴重な寝顔が見れたんですから」


お母さんの声に起こされて寝ぼけまなこの私は……驚きのあまり、目を見開いた。


「ちょ、ゆうちゃ……勇人!どうして!?」


何と……目覚めてすぐに、勇人の今日もイケメンなスマイルが目に飛び込んできたのだ。


「どうしてって、あんた……今日、十時にお坊ちゃんと約束してたんじゃないの?」

「そりゃあ、してたけど……って。今、何時!?」


ハッとした私が枕元の目覚まし時計を見ると……

何と、十一時!?


「えぇ〜〜、遅刻じゃん!」

「そうよ、あんた。だから、パトリツィアのお坊ちゃんは心配して、家にまで来てくれたんじゃないのよ。ホントにもう……しっかりなさいよ」


お母さんは両手を腰に当て、ハァーっと深く溜息を吐いた。


「わわっ、ごめん。ほんっと、ごめん。すぐに着替えるから、ちょっと待ってて」

「はい、はい。お姫様」


勇人は悪戯っぽく笑って、暫しの間、私の部屋を出た。
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