パトリツィア・ホテル
だけれど……私はふと、思い出した。


「でも、私、スキューバダイビングしたことないけど。大丈夫かなぁ?」


すると彼はニッと芽を細めて悪戯っぽく笑った。


「だぁいじょうぶ。俺もしたことないから」

「えぇっ!? いや、それ、大丈夫じゃないでしょ! 初めての二人でどうやって潜るのよ!」

「そりゃあ、あんなにセクシーな寝方をする咲ほどにもなれば、すいすいとお魚のように潜れるでしょ」

「いや、全く理論立ってないし!」


夏休み初日からいつものように戯れ合う私達は、パトリツィアの系列の旅行会社という建物に入った。





「御心配なさらなくても、大丈夫ですよ。現地にはプロのインストラクターがおりますので」

「そうなんだ……良かった」


旅行会社スタッフの女性の言葉に、取り敢えず私は安心した。


「それはそうと、ホテルなのですが……実は詰まっておりまして。この部屋しか空いておりませんが、いかがいたしましょう」


そのスタッフはやや気まずそうに、パンフレットのページの一角を指差した。
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