パトリツィア・ホテル
その部屋は何と……ダブルベッドのある二人部屋で。


「ちょ……ちょっと、それはダメ! 他の部屋は……」

「申し訳ございません。今からの予約ですと、もう他の部屋は全て詰まっていまして……他のホテルも詰まっている状況なのです」

「いいじゃん、その部屋で。俺は何も問題ないぞ」

「勇人は問題なくても、私は問題大ありなの!」


だって、私……まだ高一だし、嫁入り前だし。

って言うか、プロポーズに近いことは言われたけど……

って、そんなこと関係なく、彼と一緒の部屋で過ごすだなんて、小っ恥ずかしくて耐えられない!




だけれども……

「何だ、咲。俺と一緒の部屋が嫌なのか……」

さっきまで元気だった勇人は急に萎れた。

「いや、嫌とかじゃなくって……」

そう言いながら彼の方を見ると、眉を下げて本当にしょんぼりとしていて。

急に、そんな彼が可哀想……っていうか、可愛くて仕方なくなってしまった。



「もう……分かったわよ。いいわ、この部屋にしましょう」

目を閉じ溜息を吐きながら言うと、彼は途端に目を輝かせた。

「マジで? やった、嬉しい!」

無邪気に喜ぶ彼の顔は、さっきよりもさらに可愛くて……

「もう……」

私はあきれながらも、トクンと胸に温かいものが流れるのを感じた。
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