パトリツィア・ホテル
「わっ、咲ちゃん。また顔が真っ赤になってるけど……」


「あぁもう!勇人、ホントに大丈夫だから」


「それに、さっきから何か変だし……いや、それはいつものことか」


「それ、どういう意味よ!」


私達のそんなやりとりを見ている女医さんはにこにこと笑っていて……

いたたまれなくなった私は新宮くんの手を引いて、無理矢理に病院から出た。




まだ顔が火照っている私はツイツイと歩いて……そんな私に手を引かれる勇人は、安堵の溜息をついた。


「でも本当に。咲ちゃんの体調が大丈夫そうで良かったよ」


何処かずれてるけれど、私のことを心配してくれる彼が愛しくて……でも、恥ずかしくって。

私はつい、照れ隠しに頬を膨らませた。


「もう……勇人、心配しすぎだし。まだ夏休みも始まったばかりだし、ちょっと風邪引いたとしてもどうってことないって」


すると、勇人は途端に慌て出した。


「ダメだよ、咲ちゃん。それはダメ!」


「えっ?」


「だって、明日からの旅行、なくなってしまうじゃん」


「えぇっ!?」


勇人の口からさらっと漏れた言葉に、私の目玉は飛び出しそうになった。


「ちょっと、待って。明日って……そんな急な話だったの!?」


「あ、咲ちゃん。さっきの旅行会社での話、聞いてなかったな。すごく素敵なプランがあったんで、明日、早速に出発ってことになっただろ?」


「ええ〜〜!ウソ……ていうか、そんな飛び入りみたいに予約、取れるものなの?」


「そりゃあ、パトリツィアの特権だよ」


彼は得意そうに、ニッと片目を瞑った。
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