パトリツィア・ホテル
「あぁ、それなら大丈夫。だって、咲ちゃん、もうお金持ちだし」


勇人はニッと白い歯を見せた。


「えっ、何言ってんの?私なんて、貧乏……」

「あれ、言ってなかったっけ?『Story Maker』の売上げの一部、咲ちゃんの口座に振り込まれることになってるって」

「何、それ?ウソでしょ……初耳なんだけど」

「そっか。じゃあ、ウチ来なよ。社長……父さんがちゃんと説明してくれるよ」

「ええっ、今から!?私、心の準備ができてない……」

「いいから、いいから!」


彼に手を引かれた私は、夏休みも初日からパトリツィア社長宅にお邪魔することになってしまった。





「何、この大金……」


社長様から提示された額面を見た瞬間、私はくらりと目が回った。


「咲さんの取り分だよ。口座を教えてもらうのがまだだったので、振り込めていないけどね」

「いえ、そんな……私、こんな大金受け取れません」


私は震える手で、その額面を社長に返した。


「おや、面白いことを言うね。『Story Maker』の発案者は君だ。受け取らないわけにはいかないんだが」


社長の瞳は、悪戯にキラリと輝いたような気がした。
< 152 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop