パトリツィア・ホテル
私の手を包み込む大きな両手を通じて、その優しい体温が伝わってきた。

「だから、咲さん。私はより、君がパトリツィアに必要だと感じた。こいつ……勇人はお金に苦労したことはないから色々と無頓着だと思うが、これからもしっかりと頼むよ」

社長がそう言って私と勇人を交互に見ると、勇人は恥ずかしそうにチラッと舌を見せた。

そんな勇人はやはり、可愛くて。そして、お父さん……パトリツィアの社長の決して奢らない、誠実な態度は私の心を温かくした。

「ありがとうございます。それでは私……このお金はお返しします」

「うーん、そうだね……このお金は一度、私が預かっておくということにしようか」

「預かっておく?」

「ああ。勇人と明日から、旅行に行くんだろう?それにかかるお金はここから出せばいいし、これからお金に困ることがあれば使えばいい。それでいいかい?」

「あ……ありがとうございます!」

嬉しかった。大金持ちで、全く別世界の人だと思っていた社長に、私の想いが通じて。

そして……明日からの旅行は取り敢えず、お金の心配はしなくていい。

折角だから、この旅行だけでも勇人と一緒に思い切り羽目を外して遊んじゃおう……そう思った。

すると、私の腕がツンツンとつつかれて。ふと隣を見ると、その主が悪戯っぽい白い歯を輝かせていた。
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