パトリツィア・ホテル



一夜明けて、準備が万全かどうかを確認する間もなく、私は早朝から勇人と空港にいた。


「ほら、勇人。早く!乗り遅れたらおしまいよ」

「大丈夫だって。まだ飛行機の出発まで一時間あるんだし」

「ダメよ!早く搭乗口に行かなくちゃ!」


旅行のワクワクから眠れなかった私は、国内便とは言え初めての飛行機に乗ることへの緊張も加わって、搭乗前からすでに殺気立っていた。


「やれやれ、咲ちゃんはせっかちだなぁ」


勇人はそんなことを呟きながら、眠そうに目を擦っている。


「せっかちにもなるわよ。こんなに急に出発することになって……」


本当ならもっと色々、イメトレとか必要だったのに……

って、昨日、旅行会社での話がちゃんと耳に入ってなかった私も悪いんだけど。

そんなことを考えながら、はぁっと溜息を吐いた。


「あ、ほら。もう搭乗口、そこだ。ラウンジで待ってようぜ」


勇人は搭乗口近くにある、高級感溢れるその部屋を指さした。


「えっ、ラウンジって……あんな高そうな部屋!?いや……私、この待合席でいいわ」


大きなガラス越しに飛行機の発着が見渡せる、搭乗待合室。

私には、これで充分だ。
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