パトリツィア・ホテル
インストラクターが潜り方の説明を始めた。

「それではまず、『耳抜き』の練習をしますね」

『耳抜き』とは鼓膜への水圧による痛みの解消法で、水中で鼻をつまんで息むと耳管の通気が可能となり、痛みはなくなる。

こうした、スキューバダイビングの基本的なことを教わって、私と勇人は海に潜ることになった。



モーターボートで海の真ん中まで進み、その場で潜る。

「ねぇ、すごい、すごいよ!この海に潜るんだぁ」

私はワクワクがおさまらず、ボートの上で人目も気にせずにはしゃぎまくっていた。

「うん……咲ちゃん、ケガはしないように気をつけて!俺から離れないように……」

今度は勇人が冷静で、少し眉を下げて。
はしゃぎすぎている私のことを心配している様子だった。

「なぁにを心配してるの!大丈夫だって!スキューバ、楽しむわよ」

「いや、だから……あっ」

私は勇人の話も待たずに、先発の生徒に続いて海に潜った。



(わぁ……めっちゃ、綺麗……)

目の前に広がる珊瑚礁。それは、海面を通して見るのとはまるで違っていた。

緑にピンク、黄色……海底に降り注ぐ陽を浴びて光り輝くそれはとっても幻想的で、さらにそれらの間を可愛らしく綺麗な小魚達がすり抜けたり追いかけっこをしたりして遊んでいるようで。

私は初めて見る光景に、まるで言葉にならないくらいに感動したのだった。
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