パトリツィア・ホテル
「すみません。お……おトイレ、行きたいです!」

海面から顔を出した私は、イケメンのインストラクターに涙目で主張した。

「そうですか。うーん、ボートからは結構、離れてしまったからな……」

「が……我慢できないんです。海の中でしようと思ったのに、どういう訳か、できないし……」

そう。海の中では、何故かできなかった。

頑張ってはみたのだけれど……水圧の関係か、変に理性が働いているのか、どうしてもできなかったのだ。

そのインストラクターは首を捻ったけれど……

「そうだ。あの無人島……あそこまでなら、我慢できますか?」

「うーん……なんとか……」

それは、私達が頭を出している海面の辺りからはすぐに辿り着けそうな島だった。

「分かりました。急ぎましょう」

彼は私の手を引き、一気に泳ぎ始めた。

インストラクターの手に引かれる私の目の前には、その島はみるみるうちに近付いてきて。

あれよあれよと言う間に、私は、その島に上陸した。

「う〜、ヤバい、ヤバい〜」

私は砂浜でウェットスーツを脱ぎ捨てて、ビキニ姿で若干、蹲る格好をしながら用を足せそうな物陰を探した。

そんな私を見るインストラクターの目付きなんて……その時の私には、気にしている余裕はなかった。
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