パトリツィア・ホテル
温かで優しい彼の手は、髪を伝って肩を撫でて……そっと私の胸の膨らみに触れた。

一瞬、私の体はビクンと震えて。

途端に彼は触れていた手を退けた。


「ごめん。あんなことがあった後なのに、俺……」


そう言って俯く彼からは、優しさと温かさが滲み出ていて。

温かい……

この温かさに溶け込んで、あの記憶を全部、塗りつぶしてしまいたい。

そんな想いが頭の中を支配して……

私は彼のその手を握った。

「咲……」

「勇人。触って……」

「えっ?」

「私はあなたのものなの。他の誰のものにもならない……」

その言葉を口にした瞬間……勇人はまるで、タガが外れたかのように私を抱きしめた。

「あっ……勇人……」

私の体全体に彼の温もりが伝わる……その指が、敏感な部分をなぞる。

ゆっくりと柔らかなベッドに倒れて……私は彼の、吸い込まれそうなほどに澄んだ瞳を見つめた。

「勇人……お願い。初めてだから……優しくして」

そう……私の初めては、彼のためのもの。

優しくて温かくて、世界で一番愛しい……


「あぁ……咲。誰にも渡さない。この先、何があっても……絶対に俺は、咲を守る」


私はそう言ってくれた彼の温もりを、この体に全て受け止めて。



「あっ……あんっ。好きよ、勇人……」

「俺も……咲。愛してる……」

昼間にあったことなんて、全て忘れて……彼との甘く優しい記憶に塗り替えるほどに。

私達は激しく深く、愛し合ったのだった。
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