パトリツィア・ホテル


「勇人……本当に、大丈夫?」

「ああ……これは俺と父さんの問題なんだ。咲にまで迷惑をかけるわけにはいかない」

パトリツィアの社長宅前の勇人は無理に微笑んでみせて……だがしかし、その顔は青ざめているように見えた。



「勇人……!」

社長宅へ入ろうとする彼の腕を、思わず掴んだ。

彼がそのまま遠くへ言ってしまう……そんな不安が波のように押し寄せて。

私は勇人をギュッと抱き締めずにはいられなかった。

「私が……ついてるから」

彼の背中に、グッと顔を押し付ける。

「何があっても……たとえ、あなたが何もかもを失くしても。私はずっと、あなたの傍にいる。だから……」

「咲……」

振り返る彼は辛そうで……しかし、私にそっと柔らかく微笑んだ。

「ありがとう。心強い……俺、頑張るよ。絶対にパトリツィアは潰さない」

彼の声は力強く、頼もしくて。

だけど、どうしてだろう?

目の前の彼は、幼い頃の『泣き虫ゆうちゃん』に重なって見えた。

「勇人……」

私は思わず、彼の名前を口にして……

しかし彼は、寂しげな微笑みを浮かべたまますっと私の元を離れて、パトリツィアの社長宅に入って行ったのだった。
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