パトリツィア・ホテル
「どうして……?どうしてよう……」

家への道を歩く私の口から、自然に溢れる。

楽しい楽しい高校生活最初の夏休み。最高のバカンスを過ごすはずだった。

怖いハプニングはあったけれど、勇人とお互いの想いを確かめ合って。

私達は初めての旅行……沖縄で、激しく愛し合い、結ばれた。

なのに……彼の会社、パトリツィアが最大の危機に直面して。
その問題は、私には想像もつかないほど重くって。

勇人の助けになることができない……私は自分の無力さが恨めしかった。




西の空に沈む夕陽に照らされながら、涙が溢れそうになるのを堪えながら歩いていると……
突如、聞き慣れた高慢ちきな声がかけられた。

「あら、島崎さん。冴えないお顔をして、どうしましたの?」

その声に顔を上げると、勝ち誇ったような笑みを浮かべた神澤さんが、私の行手を遮るように立っていたのだ。

私の帰り道……偶然の遭遇にしては出来過ぎている。

まるで、待ち伏せしていたかのように思えた。

「神澤さん!あなた……」

「あなたの『ゆうちゃん』はご一緒じゃあ、ありませんでしたの?何でも、ご一緒に沖縄バカンスへ行っておられたとか」

「…………!」

「あ、そっかぁ。でも、『ゆうちゃん』のパトリツィアは倒産寸前でしたわね。そりゃあ、あなたごとき庶民に構っている暇はありませんよね」

夕陽に照らされた金髪の彼女はやはりゴージャスで……だけれどもその顔は、悪魔のように邪悪に歪んで見えた。
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