パトリツィア・ホテル
「いくらあのボンクラ御曹司様でも、会社の存続のための手段を選ぶくらいの脳はあるでしょうから。断言しますわ……新宮のお坊ちゃんは、必ずパトリツィアの存続と、この私を選ぶって」

神澤さんは自信たっぷりに、睫毛の長い目を細めた。

「そんなこと……」

「それが、この世界で生き抜くってことなのよ。世間知らずの島崎さん」

底意地の悪さたっぷりのその言葉に、言い返すことができなくて。

甲高い笑い声を上げながら去ってゆく彼女を、私はただただ睨むことしかできなかった。





何も考えられず頭が真っ白なまま帰宅した私は、自宅のベッドに顔を押し付けた。

(どうしたらいいのよう……)

神澤さんの言う通りにすることは、決して最善の策とは思えない。

もし私が勇人と別れたとしても、彼女がパトリツィアを救う保証なんてどこにもないし……それに、あんな性悪女には彼のことを任せておけない。

だって、私にとって勇人は、誰よりも愛しくて大切で、かけがえのない存在で。

神澤さんのつまらないプライドと欲求のために弄ばれる……そんなこと、きっと彼も望まないし、私も絶対に嫌だった。

(でも、それじゃあ……どうしたらいいのよぅ)

言葉にならないその想いをひたすらに反芻する……
けれども、時間だけが無情に過ぎていった。
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