パトリツィア・ホテル
「亜紀さん?」

「やっぱり……あなた、そっくりね」

「えっ?」

「まるで、若い日の私を見ているようだわ」

そんなことを言って、私を見て微笑んだ。

「いや、そんな……亜紀さんの方が、ずっと綺麗です」

「いいえ、そんなことないわ。あなたにはまだ、自分が美人だって自覚がないだけよ」

「いえ、そんなこと……」

「それに、身分不相応の人から好かれてしまって……常に背伸びしなきゃって戸惑ってる。そんな所も、私にそっくり……」

彼女のその言葉は何処かしら、影を含んでいて。

それはきっと、この人がパトリツィアから離れた理由の核心に触れることだ……私はそう、直感した。

「私は……身分不相応で、背伸びをしなくちゃって戸惑うことはあっても。絶対に捨てたりなんかしません!」

そう言ってグッと彼女を睨むと……亜紀さんはやんわりと微笑みを浮かべながらも、その鋭い眼光を私に向けた。

「あら……捨てる、とは何のことなのか分からないけれど。でも……会社のために必死に自分の能力を発揮しようとしていたのに、それを尽く無下にされて。だったら、自分の認められる夢に進んでやるって……苦渋の想いでした決断は、誰からも責められることではないと思っているわよ」

(やっぱり……)

私は自分の手の平をギュッと握り締めた。
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