パトリツィア・ホテル
だから私は、彼女の目をすっと見据えた。

「亜紀さん……どうか、パトリツィアを救って下さい」

「えっ? 救うって?」

「足りないお金……ル・インベスチェから、パトリツィアに投資して欲しいんです」

その言葉はあまりに直球だったのか、亜紀さんは暫し、目を丸くして私を見つめた。



しかし……

「あはははは!」

すぐに、口を手で押さえて笑い始めた。

「亜紀さん?」

「あなたって、本当、面白い娘ね! まさか、女子高生に投資話を持ちかけられるなんて思ってなかったわ」

「無茶なお願いだってことは分かってます。でも……それ以外に、勇人達を助けてあげる方法はないんです」

私が『勇人』の名前を口にすると、亜紀さんの表情は固まって……その顔からは笑みが消えた。

「勇人……」

切ないほどの憂いに溢れた瞳を私に向ける。

「あの子も……私とはもう、何の関係もないわ」

「えっ?」

「だって、遊園地で置き去りにされたまま、帰って来ない。そんな最低な母親……今さら何をしても、許してもらえるはずがないんですもの」

言葉にできないほどの寂しさを灯しながら微かに揺れるその瞳を見て……
亜紀さんはあの日のことを後悔している。

私はそう、確信した。

だから、そんな彼女……勇人のお母さんを、真剣な瞳でグッと見据えた。


「何が……あったんですか?」

亜紀さんは私から目を逸らす……だけれども。

私は込み上げる涙の混じる声を振り絞り、必死で彼女に尋ねた。

「勇人のかけがえのない……たった一人のお母さんだった亜紀さんに、何があったのか。お願いです。教えて下さい……」
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