パトリツィア・ホテル
伝えたかったこと。勇人のお母さんに知って欲しかったこと全てを、私は伝えた。

(お願い、亜紀さん。もうこれ以上、自分を……勇人を傷つけないで)

私は彼女と見つめ合う。

暫く……永遠かと思えるような無言の沈黙が続いた。

そして……

「ふふっ……」

私を見つめる彼女の頬は微かに緩んだ。

「あなたには負けたわ。咲さん」

「えっ……」

「そうね。許してもらえるか、どうか……それは、会ってみないと分からない。でも、私もずっと臆病なままでもいられない」

「それじゃあ……」

彼女はにっこりと微笑み、頷いた。

「勇人にもう一度会ってみる……その決心がついたわ」

信じられない……ことだけれど。

亜紀さんが彼にもう一度、会ってくれる。

そのことは私の胸を熱くして。この目には、今度は歓喜の涙が込み上げた。



そんな私を見て、彼女はさらに美しい微笑みを浮かべた。

「本当に……面白い娘ね。言ってることは誰にでも言えるようなことなのに。あなたが言うと、何て言うか……人を動かす不思議な力を持つんだもの」

「ありがとうございます、亜紀さん。本当に……」

堪えられない涙を流す私の手を、亜紀さんの温かい手がそっと包んで。

勇人に会ってくれることを約束してくれて……

それだけでなく、パトリツィアの抱えている危機をどう乗り越えるか。私に彼女の考えを教えてくれたのだった。



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