パトリツィア・ホテル
「いいえ、神澤のお嬢さん。あなたの力がなくっても、パトリツィアは充分にやっていけるわ」

亜紀さんはきっぱりとそう言い放った。

「はぁ?」

「だって、我が社がパトリツィアに巨額の投資をする……もう、その手筈は整っているんですから」

「何ですって? あなたって一体、何者……」

神澤さんは亜紀さんをじっくりと見て……
漸くその正体に気付いたのか、一気にその顔は青ざめた。

「うそ……そんな、まさか!? ル・インベスチェの……」

途端に狼狽え始める彼女に、亜紀さんはニッと白い歯を見せた。

「ええ。私はル・インベスチェを総括しております、流風 亜紀です。この度は、息子とその恋人が相当に『お世話になった』ようで」

「あ……うそ。うそよ……」

まさに形勢逆転……万策尽きた神澤さんは、がっくりと項垂れた。

そんな彼女に、亜紀さんは不敵な笑みを向ける。

「さて、お嬢様。あなたの今回の不始末、私としては表沙汰にしても良いのですが……あなたも勇人のクラスメイトとのこと。あまり手荒なことはしたくありません。だから……もう金輪際、この二人に妙な真似はしないこと。そう約束して下さるなら、見逃して差し上げるわ」

貫禄たっぷりの女社長様の言葉に、もうすっかり戦意を喪失した神澤さんは、ただ頷くことしかできなかった。
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