パトリツィア・ホテル



日曜日。

私が通りを歩くと、いつもとは違う……周囲の視線を痛いほどに感じた。

それは、私の自意識が過剰なのかも知れない……でも。

朱里から見立ててもらった服を身に纏い、きちんとメイクをした私はどこか、生まれ変わったような気がしていた。



待ち合わせ場所の時計台の下に着いた。


「十分前か……」


私ははぁっと溜息をついた。

今考えてみると……朱里はああ言っていたけれど、新宮くんは別にデートのつもりはないのかも知れない。

もしかしたら、本当にパトリツィア・ランドのために新アトラクションを考えるためだけに誘ってくれたのでは……いや、きっとそうだ。

私はまじまじと自分の服装を見て……その気合いの入れ方が途端に恥ずかしくなった。


「やっぱ、いつも通りの服で良かったかなぁ……」


そんなことを呟いていた、その時だった。


「そこの彼女! 一人? 誰か、待ってんの?」


唐突にチャラチャラした男二人組が私に声をかけてきた。


「え……ええ。待ち合わせしてて」

「じゃあさ、ちょっとの間だけでも、俺らとお茶しない? おごるからさ」


(え〜、これって……ナンパ?)


そんなこと、されたことも初めてで……私はテンパった。
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