パトリツィア・ホテル
「だから。あんたは、そういうのがいけないの!」

「えっ?」

「そういう、卑屈で自信のないトコ。あんたは黒髪のままでも、ちょっとお洒落するだけでこんなに可愛いんだし。本当に勿体ない」


何だか、説教される形になってしまった。

でも、これはいつものことで……朱里はさらに、いつもと同じように続けた。


「だから! あんたは自信を持って明日のデートに臨むこと!」

「え? い……いや、別にデートじゃないって」

「じゃあ何なのよ? 彼の方からテーマパークに誘ってくれたんでしょ。それをデートと言わず何て言うの?」

「だから。説明したでしょ? 彼のお父さんに無茶ぶりされて、アイディアのヒントを得るために行くって」

「あぁもう、羨ましい! イケメン御曹司様の親まで公認とは……。もうあんたの人生、薔薇色じゃん」

「だから……本当にそんなんじゃないって」

「いい? 明日、いけるとこまでいっちゃいなさいよ。私には分かる、あんたならいける!」

「いや、だから……」


私達は、そんな昔から変わらないやりとりをしてその土曜日を過ごした。

この娘……朱里は見た目が茶髪で派手になっても、幼い頃から何も変わらない。

少し物言いのキツい時もあるけれど、私のことを親友だと思ってくれていて、困った時には文句を言いながらも助けてくれる。

だからこそ、私は一番信頼している……そんな親友なんだ。
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