パトリツィア・ホテル
私は茫然と彼……新宮くんを見つめた。


すると新宮くんは……


「プッ……!」


私の目を見て吹き出した。


「すごいよ、咲。『やめろって言ってるんだよ、ふざけんな!』って。強すぎ……」

「なっ……ふざけんな、なんて言ってないし!」

「そうだっけ? でも、あの腕の捻り方……あれは痛いだろうなぁ」

「そんなの、あいつらが悪いんだもん」

「でも……」


頬を膨らませる私を、新宮くんはマジマジと見つめた。


「何?」


私が睨むと、新宮くんはにっこりと笑った。


「咲って、ちゃんとした格好とメイクしたら、こんなに可愛いんだな。そりゃあ、変な奴らに絡まれるわ」


そんなことを言ってくれる新宮くんの笑顔の方が可愛くて……また、私のドキドキ病が発症し始めた。


「もう! そんなこと、もういいから。今日は、パトリツィア・ランドの新アトラクションのために来たんでしょうが」


目を逸らして先を急ぐと、新宮くんの笑顔は悪戯っぽいそれに変わった。


「あっ! もしかして……そのためにお粧しして来た?」

「だから……そんなこと、もういいから!」


私の顔はかぁーっと熱くなっていったが、そんなことには気付かれぬよう、パトリツィア・ランド入場ゲートへ向かってひたすらに足を進めた。
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