パトリツィア・ホテル
「やっぱり……咲はあの頃と同じだね」

「えっ?」

新宮くんはにっこりと目を細めた。

「咲はあの時も……お姫様のパレードに見惚れていたんだ」

「そう言えば……」

私は朧げな記憶を思い出した。

あの時……五歳の時にも確かに見た、このパレード。

メリーゴーランドに乗ってすっかり泣き止んだゆうちゃんと一緒に。

そして私は「咲もいつかお姫様になりたいなぁ」なんて呟いていた……そんな気がする。




私はそんな物想いにふけっていた。

すると……

「今だったら、俺が叶えてやれるよ」

「えっ?」

「咲のお願い!」

そう言った彼は徐に、事務所とは思えぬほどにお洒落なパトリツィア・ランドの建物へ私を連れて入った。


「この子! 可愛くて綺麗なお姫様にして下さい」

「まぁ、お坊っちゃま。可愛い女の子ですね。了解です。私どもが誰よりも可愛らしいお姫様にして差し上げます」

「ええっ、いや、ちょっと……」


呆気に取られる私に、使用人達はお姫様の衣装を誂えた。

ピンクのドレスに綺麗な緑色のダイヤのついたティアラ……それらは私の今まで身につけたことのないものばかりで。

鏡の中の自分が徐々に美しく、可愛らしく変身してゆくごとに、戸惑いながらも……私はまるで夢を見ているかのような幸せな気持ちになっていた。
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