パトリツィア・ホテル
「あぁ、そうだな。うち、母親がいないし、お弁当を持たされることがないんだ」

「えっ……」


初めて知った。

新宮くんの家にはお母さんがいないって。

でも、それは本当にプライベートなことだし……深く聞くのは躊躇われて。

私は母親から話題を逸らした。


「じゃ、じゃあさ。私が新宮くんの分もお弁当、作って持って来ようか」


すると、新宮くんの瞳は輝いた。


「え、ホント!? いいの?」

「え、えぇ」

「やったぁ、めっちゃ嬉しい。明日から、楽しみ〜」


彼は爽やかな笑顔で喜んだ。


(バレたらまた、クラスの女子達に睨まれるかな)


またマズいことになるかなぁ……って不安はあった。

でも目の前で無邪気に喜ぶ彼を見ていると、そんなことは些細なことに思えてきて。

明日からお弁当作り、頑張ろう……ただ、そう思った。


「それと、あれも。楽しみにしてるよ!」

「えっ、あれ?」

「そうだよ。忘れてないよな? ほら、パトリツィア・ランドの新アトラクション」

「あっ!」


つい、私の口から漏れた。

そうだ……私には、そんな任務が言いつけられていたんだ。

でも、昨日のランドでの彼との思い出の方がより強烈で……忘れてた。
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