パトリツィア・ホテル
だけれども……


「ちょっと、ゆうちゃん!」


私は彼を睨んだ。

『ゆうちゃん』という呼称は自然に口から出た。


「何を他人事みたいに言ってるの!? あなたも一緒に考えてくれるってことだったでしょ!」

「あれ、そうだったっけ? って言うか、もう五時間目始まるぞ。早くいかないと」

「もう!」


そんな彼は、普段、クラスにいる時のイケメン優等生……みんなの憧れの顔とはまるで違う、悪戯っ子で。

これって、私だけに見せてくれている顔なのかな。

そんなことを考えると、何だか、むず痒いような、嬉しいような感じがした。




(新アトラクションか……)


午後からの授業を聞きながらも、私の頭からは常にそのことが離れなかった。

私は思い出してみた。

昨日のこと……自分がランドのお姫様になれたこと。

とっても楽しくて、幸せだった。

まるで、自分が御伽の国のプリンセスになれたみたいで……シンデレラストーリーのプリンセスになれたみたいで。

だって、子供の時……五歳の時から、ずっと憧れていたから。

自分があんなに綺麗なドレスを着て、お姫様になること。

そして……物語の主人公になること。

それは誰でも……今の幼い女の子も、きっと夢見ていることなんだ。
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